【飲食店開業マニュアル】必要な手続きや準備方法を徹底解説

飲食店開業

「飲食店を開業したいけど、何が必要なの?」

「飲食店の開業のマニュアルってないの?」

いざ、飲食店を開業しようと思っても、何が必要なのかどんな手順を踏めばいいのかわからないですよね。

飲食店を運営するには大枠では、以下の3つの流れで始めます。

飲食店を運営するまでの流れ
  1. 飲食店開業準備前に決めごと
  2. 飲食店開業前にやるべき準備
  3. 開業直後〜本営業までにやるべきこと

本記事では上記のことを深掘りして解説します。また、記事終盤では一部の飲食店に必要な手続きにも触れていきます。

飲食店開業前に決める・考えるべき3つのこと

まずは飲食店の開業前に決めるべき・考えるべき3つのことについて解説します。以下の3つです。

飲食店開業前に決める・考えるべき3つのこと
  1. 個人営業かフランチャイズか
  2. お店のコンセプトを決める
  3. 競合店のリサーチをし自分の経営イメージの参考にする

開業前の準備に入る前に、そもそも何をすべきか良いかわからない方向けになります。順番に見ていきましょう。

①個人営業かフランチャイズか

まずは、個人営業なのかフランチャイズで飲食店を開業するのか決めましょう。

個人営業とはその名の通り、完全に個人で営業を行う直営方式です。フランチャイズは、フランチャイズ本部の企業にロイヤリティ(対価)を支払い営業を行う手法になります。

それぞれのメリットデメリットは以下の通り。

個人営業のメリット
  • 収益をそのまま得られる
  • 人材のマネジメントをしやすい
  • 自由度が高い
個人営業のデメリット
  • 資金力がなければ廃業リスクが高まる
  • 短期間で多店舗展開しづらい(ブランディングが難しい)
フランチャイズのメリット
  • 短期間でスピーディな展開ができる
  • 既存のブランドを使って集客・運営できる
  • 本部のノウハウを活かせる
フランチャイズのデメリット
  • 短期間でスピーディな展開ができる
  • 既存のブランドを使って集客・運営できる
  • 本部のノウハウを活かせる

個人営業もフランチャイズ営業も自由度や収益面、ブランド面で違いがあり、一長一短です。飲食店の開業準備をする前に決めておきましょう。

②お店のコンセプトを決める

続いてお店のコンセプトを決定します。飲食店にはさまざまな種類があり、業態1つとってもカフェやレストラン、バーなどジャンルは多岐に渡るでしょう。

その中でもおしゃれなお店にするのか大衆向けにするのか、テイクアウト専門店にするのかなど、想定する顧客に合わせた業態を選定し、コンセプトを決めなければなりません。

自身がやりたいコンセプトと顧客のニーズが合っているかどうかを鑑みながら考えていきましょう。

③競合店のリサーチをし自分の経営イメージの参考にする

続いては、競合店のリサーチを行い、自分の経営イメージを参考にすることも開業準備をする前にしておきましょう。

そのため、構想しているお店に似た店舗を把握しておくことで実際に運営した際のメニュー内容や味、運営状況などを参考にします。

また、安定的に集客を行えている店舗は、店内の雰囲気やスタッフ、SNSの活用など幅広い観点で力を入れているでしょう。

自分の想像するお店はオリジナリティの高い店舗ではない可能性があるため、現実を見るのも兼ねて競合のお店を数10店舗以上見ておきましょう。

飲食店を開業するまでに必要な8つのやるべきこと

それでは、飲食店の開業までに必要な8つのことを紹介してきます。以下の手順となっていますので、ぜひ一度目を通しておきましょう。

飲食店を開業するまでに必要な8つのやるべきこと
  1. 必要な資格や届け出を確認する
  2. 事業計画を立てる
  3. 物件を探す
  4. 開業資金を調達する
  5. 内装工事をする
  6. メニューを決める
  7. 人材の募集をする
  8. 開業の届け出をする

開業前には入念な準備を行っておくのがマストです。それぞれのやるべきことについて順番に説明していきましょう。

①必要な資格や届け出を確認する

開業前に必要な資格や届け出を確認しましょう。現在、日本で飲食店を開業するにあたって必要な資格・届け出は以下の通りです。

  1. 食品衛生責任者
  2. 防火管理者
  3. 営業許可書

3つの資格について解説します。

食品衛生責任者|食品衛生協会

食品衛星責任者とは、食品衛生法によって定められた食品の加工を行う場所に施設毎に1名以上配置しなければいけない有資格者のことを指します。

衛生上問題がないように確認することや、従業員の健康を管理、衛星管理表の作成・管理、食品の加熱や保管方法のチェック等を行います。

国家資格となっており、更新はいりませんが厚生労働省が認める講習会へ参加し、法律や条例の変更などを臨時確認する責任が生じます。設備や食品の衛星確認、従業員の健康管理や衛星管理表の作成などを行います。

17歳以上であれば基本どの方でも受講が可能です。

防火管理者|消防署

防火管理者とは、万が一の消防計画の作成や消防訓練の実施、下記の取り扱いに関する監査など防火管理上の業務を行う有資格者のことを指します。

資格は「甲種」「乙種」の2種類があり、甲種の場合、すべての防火対象物で防火管理者に選任できますが、乙種は比較的小規模なものに限定されます。

甲種は取得するのにかかる日数が2日なのに比べ、乙種は取得にかかる時間が1日となっています。どちらの資格も消防機関などで行われる講習を受けることで取得が可能です。

消防署に届け出が必要な書類は以下の4種類となります。

  • 防火対象物使用届出書
  • 防火対象物工事等計画届出書
  • 火を使用する設備などの設置届
  • 防火管理者選任届の提出

消防署に提出し、書類に問題がなければそのまま完了となります。また、実は防火管理者は30席以下の飲食店だと不要になります。

そのため、席数が少ないカフェやラーメン屋さんなどは防火管理者の資格は不要です。

営業許可証|保健所

営業許可書とは飲食店の開業に必要な届け出の1つで、下記が条件になります。

  •  最低1名の食品衛生責任者を配置
  •  保健所の許可

営業許可は保健所で行う必要があり、準備しておく書類は以下の通りです。

  • 営業許可申請書
  • 営業設備の代用・配置図
  • 食品衛星責任者の資格を示すもの
  • 水質検査成績書※1
  • 登記事項証明書※2

※1物件によって必要じゃない場合があります。

※2法人の場合のみ必要となります。

次に、書類に問題がなければ保健所の担当が開業予定の店舗へ設備と構造のチェックを行います。

チェックされる個所としては「厨房」「トイレ」の2点です。

扉付きの食器棚を設置されていたり、床が掃除しやすいかなどのチェック項目があります。

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②事業計画書の作成

前項で紹介した資格・届け出を用意できれば、次にやるのが事業計画の作成です。

事業計画書を作成することで、銀行からの融資を受けたり、国の補助金、助成金を受給することが可能になります。

飲食店の場合、企業の詳細や事業の内容、販売計画や想定利益などの数値計画、具体的な実施スケジュールなどを記載します。

事業計画書のテンプレートなどもあったりするので利用してみてください。

③物件を探す

事業計画書が完成したら次は、実際に飲食店を営む物件を探していきます。

「飲食店は立地が7割を占める」と言われているほど大事な要素ですので、手を抜かずに物件探しを行いましょう。

家賃や場所、開業予定の飲食店とコンセプトが合っているかなども確認しながら探していきます。

また、不動産屋のツテがあれば優良の未公開物件なんかも見つけることができるので「不動産屋さんの友達がいる」などという方は一度話を聞いてみるのもよいでしょう。

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④開業資金を調達する

物件を探すことができたら、次に開業資金を調達します。

仮に10席以下の飲食店の場合、大体1000万円前後の開業資金が必要になるといわれています。

おおまかな内訳は以下の通りです。

  • 物件取得費
  • 内装工事費
  • 厨房機器費
  • 空調設備費
  • 備品代
  • 広告費

物件取得費は家賃の10か月分が相場と言われています。

また、上記のものとは別に毎月かかる「運転資金」というものもありますので、しっかりと計画を立てたうえで資金を調達しましょう。

⑤内装工事をする

物件も探し終え、資金の準備もできたら次は内装工事を行います。

厨房機材や店内備品などの買い付けや、電気・水道の設備を整えます。物件の規模の大きさによって内装工事の坪単価も変化していき、基本的には大きい方が坪単価は安くなっていきます。

また、「営業許可書」を取得するために保健所の検査が必要になってくるので、機材や備品を買う前に保健所に事前相談しておきましょう。

⑥メニューを決める

続いては、メニューを開発します。店舗のメニューは新規の顧客を獲得するだけでなく、既存の顧客を呼び込むためにも以下の2つに分けて開発するのがおすすめです。

  • 新メニュー
  • 定番・看板メニュー

メニューを決めるには、食事を通してどのような食材を味わって欲しいのか、どのような体験ができるのかを想像しながら、見た目や演出を考え作成します。合わせて、実際に取り入れる食材の原価率はいくらになるのか、名前は何にするのかも決めなければなりません。

店舗のメニューは顧客の回転数にも繋がります。こだわり抜いて開発を行いましょう。

⑦人材の募集をする

次に、人材の募集を行います。アルバイトやパートなどは、お店を運営できる人材がいなければ、オープンすらできません。具体的な採用の進め方は以下の通りです。

  • 必要な人件費を洗い出す
  • 採用人数や採用要件を決める
  • 求職者のニーズを把握しターゲットを決める
  • 求人原稿を作成する
  • 人材紹介や求人媒体などに掲載する

飲食店の人手不足は常に問題となっており、採用戦略を綿密に立てておかなければ、離職率の増加や再雇用の手間が増えます。採用する人材は何人なのか、どのような条件が必要なのかなどは想定できる範囲で決めておきましょう。

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ちなみにスタッフを雇用する際は、いくつかの保険に加入しなければなりません。以下で必要な保険を解説します。

労災保険|労働基準監督署

労災保険は必ず加入しなければならない加入義務のある保険です。就業中の従業員を怪我や病気から守るための保険になります。

手続きの方法としては、労働基準監督署に行き、労災保険加入のため下記の物を提出する必要があります。

  • 労働保険関係成立届
  • 労働保険概算保険料申告書

それぞれの期限は雇った日から10日~50日以内となっていますので、しっかりと期限を守って提出をおこないましょう。

万が一の事故があった際役に立つ保険です。

雇用保険の加入|公共職業安定所

雇用保険は、働く時間によって加入が義務付けられる保険です。再就職の失業手当などを保証する保険で、教育訓練給付や育児休業給付などの労働者を支援する制度もあります。

対象者は以下の通りです。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上継続して雇用される見込みがある

届け出を提出する際は、公共職業安定所に行き、下記の物を提出しましょう。

  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者証資格取得届

アルバイトやパートも対象となります。

社会保険|日本年金機構

社会保険は任意で加入できる保険です。「厚生年金」「健康保険」「介護保険」の3種類からなります。

厚生年金保険や健康保険への加入を行います。

お近くの年金事務所に下記の書類を用意しましょう。

  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届
  • 被保険者資格取得届
  • 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)

また、法人の場合は社会保険に加入する必要がありますので、書類が変わってきます。

近くの年金事務所で確認しましょう。

⑧開業の届け出をする|税務署

今まで解説してきた項目で飲食店を開業する準備は整いました。

次に各役所へ必要な書類を準備したうえで開業届を出していきます。税務署に提出する必要のある開業届けは新たに事業を開始した日から1ヵ月以内に届け出が必要になります。

下記の書類の準備が必要になります。

  • 本人確認書類(運転免許証・パスポートなど)
  • 個人事業の開業届出書
  • マイナンバーが確認できる書類(通知カード、住民業の写し、住民票記載事項証明書など)

※本人確認書類に関してはマイナンバーカードを持っている方は不要ですので、頭の片隅に入れておきましょう。

開業届けの控えは必ず受け取ったあと保管しておきましょう。

また、従業員を雇って給料を払う予定の開業予定者は、合わせて給与支払事務所等の開設届出書も出す必要があります。

飲食店を営業するまでに取り組むべき3つのこと

ここからは飲食店を開業後か実際に営業するまでに取り組むべき3つのことについて紹介します。

以下の3つです。

  1. 設備・備品の動作をチェックする
  2. オープニングシミュレーションをする
  3. 販促・告知して集客しておく

順番に見ていきましょう。

設備・備品の動作を確認する

営業前には、設備や備品・什器などの動作ができるかどうか確認しておきましょう。いざ開店する前に空調やガスなどが使えなければ、クレームの原因になります。

営業前にチェックすべき場所は以下の通りです。

営業前にチェックすべき設備・備品リスト
  • 厨房機器
  • ガス器具
  • 空調や冷房機
  • 照明
  • 換気扇
  • 食洗機
  • 給湯器
  • 音響・BGM
  • Wi-Fi
  • 固定電話
  • トイレ
  • シンク
  • レジ
  • ユニフォーム
  • 食器
  • テーブルや椅子
  • 清掃用品

食器の量や破損などがないかやナプキンや箸、ナイフなどは準備できているか、電気は開通しているかなどチェック項目は多数あります。営業前に確認しておきましょう。

オープニングシミュレーションをする

続いては、オープニングのシミュレーションも営業前に行うべきことです。開業前にリハーサルとしてプレオープンをしておくと、準備不足や事前の認識の擦り合わせに役立ちます。

さらに、オープニングのシミュレーションは顧客の動きや料理を提供するまでにかかる実際の時間を測ることにも繋がり、現実的な差分を洗い出すのにも効果的です。

開業後からすぐに本格的な営業を行うのではなく、何度もプレオープンを行って、営業のイメージができる状態にしておきましょう。

販促・告知して認知してもらう

また、営業を行う前に販促・告知をして、狙っているターゲット層に認知しておく作業もしておきましょう。事前に集客に力を入れておくと、いざ営業を行った際にスムーズな運営に繋がります。

Webサイトの作成やグルメサイトの登録、各種SNSの作成、MEO対策など、無料でできるところは進めておくと新規の顧客を獲得できる場合も少なくありません。

営業前に販促・告知をして、お店が開くことを認知させておきましょう。

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【番外編】一部の飲食店に必要な届け出

最後に一部の飲食店に必要な警察署への届け出について紹介します。

警察署の手続きはすべての飲食店が必要というわけではなく、該当する一部の飲食店のみ必要になります。

風俗営業許可

スナックやパブ、キャバクラなどの「社交飲食店」、バーや暗めのレストランなど「低照度飲食店」、喫茶店やバー、高級焼肉店などの「区画席飲食店」。

上記に該当する風俗営業を行う予定の飲食店は警察署へ風俗営業許可の申請が必要になります。

必要な書類は以下の9点です。警察署へ行く前に準備をしておきましょう。

  • 許可申請書
  • 営業の方法を記載した書類
  • 営業所の使用に係る賃貸借契約書・使用承諾書
  • 建物に係る登記事項証明書
  • 営業所の平面図及び周囲の略図
  • 住民票(本籍又は国籍が記載されたもの)の写し
  • 市町村長発行の身分証明書
  • 東京法務局発行の登記されていないことの証明書
  • 誓約書

法人の場合は必要書類が変わってきますので、お近くの警察署にお問い合わせください。

また、許可の申請中であっても、許可されるまでは風俗店での営業を開始することができません。

平均で許可申請から55日以内に許可証が交付されます。

また、「用途地域」、「保護対象施設からの距離」といった風営法において定める要件があるので注意が必要です。

  • 保護対象施設とは、学校や図書館などの福祉施設のことを指します。

深夜酒類提供飲食店営業許可

そもそも深夜酒類提供飲食店営業とは深夜の0時から日が出始めるまでの時間に酒類を提供する飲食店の営業のことを指します。

主に居酒屋やバーなどが該当し、営業開始の10日前までに申請を行う必要があります。深夜の営業を行っていない居酒屋やバーはこの許可を取る必要がありません。

また、主にお酒を提供することを目的としていないファミリーレストランなどは深夜0時以降にお酒を提供していても深夜酒類提供飲食店営業許可をとる義務がなくなります。

深夜酒類提供飲食店営業許可に必要な書類は以下の通りです。

  • 営業開始届出書
  • 営業の方法
  • メニューの写し
  • 営業所平面図、営業所面積求積図、客室面積求積図、音響照明設備配置図
  • 申請者の住民票(本籍地記載)、外国人の場合は在留カードの写し、又は外国人登録原票記載事項証明書 
  • 保健所の飲食店営業許可証の写し

警察署で届け出を行うことが可能ですので、お近くの警察署に行ってみてください。

飲食店の開業にはたくさんの準備が必要

本記事では、開業前の準備から開業後の営業に入るまでを解説しました。結論、飲食店の開業は甘くありません。

さらに、開業してから売上が立つかどうかがスタートのため、簡単なビジネスとは言い難いでしょう。とはいえ、熱意があれば、なんとかなるケースも少なくありません。

本記事がこれから開業を検討している方の参考になりましたら幸いです。