多店舗展開の経営戦略|多店舗出店するメリット・デメリットやポイントを徹底解説

開業した店舗での経験が積み上がり、業績が順調になってくると、店舗数を増やしたいと考える方も多いのではないでしょうか。多店舗経営には様々なメリットがある反面、個店を経営する場合とは違うリスクを負う必要もあります。 また、多店舗経営にはいくつかの種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。多店舗展開を考える際に注意すべき点を知っておくことも大切です。 そこでこの記事では、
  • 多店舗展開をするメリットとデメリット
  • 多店舗経営の種類と特徴
  • 多店舗展開する際のポイント
について説明します。

多店舗展開をするメリット

多店舗展開をするメリットとして、主に次のようなものがあります。
  1. 売上の上限を引き上げられる
  2. 仕入れのコストを削減できる
  3. 店舗の認知度が向上する
それぞれ解説していきます。

メリット①:売上の上限を引き上げられる

新たな立地に店舗を構えると、新規顧客を獲得することができます。 そのため、営業する店舗数が増加すれば利用する顧客の人数も増え、それだけ売上の向上につながるでしょう。

メリット②:仕入れのコストを削減できる

仕入れは一度に大量発注するほうが単価を低く抑えられます。 したがって、多店舗展開することによって仕入れの量を増やせば、その分原価が下がり、利益率を向上させることができます。

メリット③:店舗の認知度が向上する

多店舗展開することで、店舗の看板やロゴを目にする機会が増え、顧客の間で広く認知されるようになります。 認知度が上がると企業への信頼感やブランドイメージの向上にもつながり、さらなる集客効果が期待できるでしょう。

多店舗展開をするデメリット

多店舗展開には、以下のようなリスクが伴うことも理解しておかなければなりません。
  1. 経費が増える
  2. 経営管理が複雑になる
  3. 人材確保に時間がかかる
それぞれ解説していきます。

デメリット①:経費が増える

店舗の開業には、物件取得や内装工事、設備費用などの初期投資のほかに、仕入れや人件費といった運転資金など、様々な準備資金が必要です。 多店舗展開は、増えた経費を回収するだけの収益が見込めることが前提となるため、何らかの原因で売上が減少すると経営は苦しくなります。最悪の場合、負債を抱えて撤退を余儀なくされる結果も考えられます。 したがって、店舗数の拡大を検討する際は入念な資金計画を立てることが大切です。

デメリット②:経営管理が複雑になる

管理する店舗が増えれば増えるほど、経営管理はより複雑化します。仕入れや売上の管理、スタッフの育成および勤怠管理、店舗別のキャンペーン実施など、仕事量が増えるとともに業務上のミスが発生するリスクも増加します。 そのため、店舗ごとに経営管理にかかる負担を分散するか、本部で一元的に管理できるシステムを開発するなどの体制作りが必要です。

デメリット③:人材確保に時間がかかる

店舗数を増やすと、その分現場で働くスタッフの数も増やさなければなりません。スタッフの確保にあたっては、募集を開始してから面接を経て採用に至るまでの時間を見越して求人広告を打つ必要があります。また、採用後の研修期間も含めると、しっかりと育成された人材を揃えるためにはそれなりの時間がかかることになるでしょう。 さらに、新規店舗を維持・管理するためには店舗オペレーションを担当する店長やマネージャーの存在が不可欠です。多店舗経営を行うには、こうした人材の確保や育成にかかる時間について事前にしっかりと想定しておくことが重要です。

多店舗経営の種類と特徴

次に、代表的な多店舗経営の種類とそれぞれのメリット・デメリットについてご紹介します。 多店舗経営には、次のような種類があります。
  1. 直営店
  2. フランチャイズ
  3. のれん分け
それぞれ解説していきます。

①直営店

直営店とは、企業が自ら資本を店舗経営のために投資し、営業を行う店舗のことです。多くの場合、各店舗の店長およびスタッフは本部の企業によって直接雇用されています。

直営店のメリット

直営店を展開するメリットには、次のようなものがあります。
  1. 売上がそのまま企業の収益につながる
  2. 店舗の管理・運営が容易である
メリット①:売上がそのまま企業の収益につながる
直営店は企業が直接運営する店舗であるため、店舗での売上がそのまま企業の収益になります。 したがって、店舗数を増やせばその分だけ利益が上昇することになるのです。
メリット②:店舗の管理・運営が容易である
直営店の場合、各店舗の店長やスタッフは本部の企業に直接雇用されています。 そのため、企業は従業員に対して指示および命令を下すことにより、店舗を比較的容易に管理・運営することができます。

直営店のデメリット

他方で、直営店を展開する場合は以下のようなことに注意しなければなりません。
  1. 急速な多店舗展開はできない
  2. リスクが大きい
デメリット①:急速な多店舗展開はできない
直営店の場合、出店にかかる資金はすべて企業本部が負担することになります。 初期投資を回収するまでには時間がかかるため、短期間で多くの店舗を展開すると、借入金がかさみ、財務状況の悪化につながってしまいます。
デメリット②:リスクが大きい
直営店の収益責任は、すべて企業本部にあります。万が一経営状況が悪化して閉店を余儀なくされたとしても、店舗の撤退にかかるコストはすべて企業が負わなければなりません。 そのため、ほかの経営方法に比べて直営店の展開はリスクが大きいといえるでしょう。

②フランチャイズ

フランチャイズとは、企業本部が経営ノウハウを加盟店に提供し、ロイヤリティなどの対価を受け取って加盟店に事業を行う権利を与え、店舗運営を援助している店舗のことです。店舗名は同じであっても、店舗ごとに異なる事業者が存在し各事業者が個別に運営を行っています。 以下ではフランチャイズを展開する企業側から見たメリット・デメリットを挙げましたが、加盟者視点から見たフランチャイズのメリット・デメリットも知っておくことが大切です。

フランチャイズのメリット

それでは、フランチャイズのメリットについてご紹介します。
  1. 短期間で多くの事業展開ができる
  2. 利益率が上がる
  3. リスクを分散できる
メリット①:短期間で多くの事業展開ができる
フランチャイズでの店舗展開の場合は、出店にかかる資金や土地などの初期費用はすべて加盟店が負担することになります。また、店舗スタッフの採用や育成も店舗ごとの事業者に一任されるため、直営店に比べて本部企業への負担が少ないです。 したがって、フランチャイズ方式では比較的スピーディーな事業展開ができます。
メリット②:利益率が上がる
フランチャイズの場合、企業本部は経営ノウハウを提供して事業を行う権利を与える代わりに、加盟店から加盟金やロイヤリティを受け取ることになります。 そのため、直営店での展開方式に比べて利益率が高くなります。
メリット③:リスクを分散できる
フランチャイズの場合、店舗の収益責任は加盟店側にあります。そのため、もし急な環境の変化によって店舗の売上が急減したとしても、それによって生じた損失は加盟店が負担することになり、企業本部は補償する義務を負いません。 出店にかかるリスクを全て企業本部が負わなければならない直営店と比べて、フランチャイズではリスクを分散することが可能なのです。

フランチャイズのデメリット

フランチャイズ方式のデメリットについても押さえておきましょう。
  1. 売上がそのまま収益にならない
  2. 加盟店が起こしたトラブルがブランドイメージの低下に繋がる
  3. 店舗マネジメントが難しい
デメリット①:売上がそのまま収益にはならない
フランチャイズの場合、企業本部の収益となるのは各店舗から受け取るロイヤリティであり、これは売上の一部に過ぎません。 そのため、店舗での売上がそのまま収益となる直営店の場合と比べて、たとえ店舗売上が伸びても、その分だけ収益が伸びるわけではないことに注意が必要です。
デメリット②:加盟店が起こしたトラブルがブランドイメージの低下に繋がる
フランチャイズの場合でも、直営店と同じく店舗には企業本部の看板が掲げられています。企業はマニュアルを作成するなどして提供するサービスの均質化に努めますが、営業については基本的に加盟店側に裁量があるため、店舗ごとにサービス内容に差が出てきてしまうことがあります。 また、店舗で何かトラブルが起きた場合、それが企業本部の責任でなくとも、加盟店は本部の看板を掲げて営業しているため、企業のブランドイメージが低下してしまう恐れがあります。
デメリット③:店舗のマネジメントが難しい
店舗の看板は企業本部のものであっても、本部と加盟店とはそれぞれ独立した対等なパートナーです。各店舗のスタッフに対しては、企業本部の指揮命令権が行使できません。 そのため、企業本部の理念やスタッフ育成システム、店舗の運営マニュアルなどを加盟店と共有する必要があるなど、フランチャイズでの店舗マネジメントは直営店と比べて難易度が上がります。

のれん分け

のれん分けとは、企業で働く社員に対して、本部の経営ノウハウなどを利用して独立した事業を行うことを認める制度のことです。 フランチャイズとの違いに注目しながら、それぞれのメリット・デメリットについて見ていきましょう。

のれん分けのメリット

のれん分けには次のようなメリットがあります。
  1. ブランド力をあげることができる
  2. 従業員のモチベーションが向上する
メリット①:ブランド力を上げることができる
加盟者が第三者であるフランチャイズと異なり、のれん分け制度は企業とつながりのある従業員が加盟対象であるため、本部との信頼関係があるスタッフによる多店舗経営が可能です。 また、店舗運営についてのノウハウを熟知した従業員が経営することで質を担保し、ブランド力をさらに向上させることもできます。
メリット②:従業員のモチベーションが向上する
「独立」という選択肢があることは、従業員にとって魅力的です。 のれん分けは、より独立志向の強い従業員のキャリア形成に貢献し、働き手のモチベーションを高める効果が期待できます。

のれん分けのデメリット

のれん分けのデメリットには、以下のようなものが挙げられます。
  1. 本部と加盟店または加盟店どうしでの競争を招く
  2. ロイヤリティの料率が低い
デメリット①:本部と加盟店または加盟店どうしでの競争を招く
のれん分けした加盟店が企業本部と同じ顧客層を持っている場合、本部と加盟店、もしくは加盟店どうしで顧客の取り合いになってしまう可能性があります。 そのため企業本部は、のれん分けした加盟店が同一事業を同一地域で行うことがないように、加盟店に対して競業避止義務を課すなどの対策を行うことが必要です。
デメリット②:ロイヤリティの料率が低い
従業員に対してのれん分け制度を適用する場合、より効率的な多店舗経営を実現するために、フランチャイズの場合よりも加盟金やロイヤリティの料率を低く設定する傾向にあります。 そのため、フランチャイズに比べると収益が低くなってしまいます。

多店舗展開する際のポイント

多店舗展開を考えている場合、いくつか事前に確認しておくべきポイントがあります。
  1. 既存店舗の現状を分析する
  2. 必要な資金とその調達方法を確認する
  3. 出店エリアを検討する
  4. 店舗間でマニュアルを共有する
以下、それぞれについて説明します。

ポイント①:既存店舗の現状を分析する

2店舗目を出店する前に、まずは現在営業している店舗の現状を分析してみましょう。現時点での収益をしっかりと把握した上で、店舗を増やすかどうか慎重に検討することが重要です。 既存店舗で成功あるいは失敗したことを振り返ってその要因を分析し、成功したことについては再現性を高めるための工夫を考え、失敗したことについては改善のための対策を練る必要があります。

ポイント②:必要な資金とその調達方法を確認する

新たに店舗を出店する際には、多くの資金が必要になります。まずは、資金をどの程度用意しなければならないかを綿密に計算しましょう。 自己資本で足りない場合は、国・自治体からの補助金や助成金、減税制度などの利用を検討し、金融機関から融資を受ける場合は入念な返済計画を立てることが大切です。

ポイント③:出店場所を検討する

新たな店舗を出店する場所にも気をつける必要があります。商圏調査を行い、その地域の顧客層を把握することはもちろん、既存店舗との距離についても検討することも重要です。 既存店舗に近いエリアを選んだ場合、店舗どうしで顧客の取り合いが起きる可能性があります。その一方で、顧客の店舗間での商材のやり取りやスタッフの派遣などのオペレーションを効率的に行うことができます。また、その地域での認知度の向上やブランドイメージの強化など高い宣伝効果の実現により、競合他社や新規参入を抑止することが可能です。 逆に、既存店舗から遠いエリアを選んだ場合、店舗管理のコストは高くなりますが、店舗どうしが競合してしまう危険性は低下します。 以上を踏まえ、新規店舗を出店する際は適切な立地を選ぶようにしましょう。

ポイント④:店舗間でマニュアルを共有する

新規店舗を出店する場合、新たにスタッフを採用する必要があります。また、全店舗において同程度の水準のサービスを提供することも大切です。 そのため、既存店舗で積み上げた経験やノウハウを整理して業務内容をマニュアル化し、それをスタッフおよび店舗間で共有するようにしましょう。マニュアルを活用することで、スタッフ育成にかかるコストが削減でき、業務やサービスの品質向上にもつながります。

まとめ

この記事では、多店舗展開をするメリットとデメリット、多店舗経営の種類と特徴、多店舗展開する際のポイントについてご紹介しました。 多店舗展開には、売上の上限引き上げ、仕入れのコスト削減、店舗の認知度向上といったメリットがある一方、経費の増加、経営管理の複雑化、人材確保に時間を要するなどのデメリットがあります。 多店舗経営の種類としては、直営店、フランチャイズ、のれん分けがあり、それぞれにメリット・デメリットがあるため、各店舗の状況に応じた方法での展開を検討するとよいでしょう。 多店舗展開の際のポイントとしては、現状分析、資金、立地、マニュアルの4つを取り上げました。店舗数を増やしたいと考えている方は、この記事で紹介したことをぜひ参考にしてみてください。