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これから初めて人を雇う上で、手続きに不安を抱える個人事業主もいるのではないでしょうか。また、雇用するハードルに関して懸念している方もいるでしょう。
求人をかけることで人を雇うことができれば、手続きから雇用するまで自分でできるか不安という方は委託して全て任せることもできます。
実際に、現在は業務委託してのサービスの質が高いことで利用する人も増えてきました。
ここでは個人事業主で人を雇う際の必要な手続きとかかる費用を解説していくので、雇用する上で最適な方法を見つけていきましょう。
個人事業主が従業員を雇う際に必要な7つの手順
個人事業主が従業員を雇う際に必要な手続きを紹介します。
必要な手続きは以下の通りです。
- 労働条件通知書作成
- 雇用契約書作成
- 社会保険・労働保険の手続き
- 税金の手続き
- 労務管理の書類準備
- 36協定締結
- 就業規則の届出
すべての手続きが人を雇う上で重要な項目となるため、しっかりと内容を理解しておきましょう。
①労働条件通知書作成
労働条件通知書は、労働者が働く上での条件を明示するための通知書です。作成するにあたって、労働基準法で定められている項目を明示しておかなければなりません。
明示する必要がある項目は以下の通りです。
- 労働契約の期間
- 就業場所と従事すべき業務の内容
- 始業及び終業時刻
- 所定労働時間を超える労働の有無
- 休憩時間・休日・休暇
- 就業時転換に関する事項(交代制勤務がある場合)
- 賃金の決定、計算及び支払い方法
- 賃金の締切及び支払い時期
- 退職に関する事項(解雇理由含む)
指定された書式はないため、上記の項目が明示できるテンプレートで問題ありません。
労働者に通知する際には原則として書面での明示が求められますが、現在はテレワークでの働き方が増えたことで、インターネットを通じてのメールでも認められています。
ただし、条件として労働者が出力して書面で残せることが必要であるため、PDFのように添付ファイルを利用するとよいでしょう。
②雇用契約書作成
雇用契約書は、労働者との雇用契約を結ぶための書類です。原則として、法律では雇用契約書は義務ではありません。基本的には口頭でも労働者が雇用されたと分かればよいとされています。
作成する際も労働条件通知書のように明示する項目は定められておらず、内容も被りやすくなることから作成しない個人事業主も多いです。
ただし、ここでは雇用契約書の作成を推奨します。なぜなら、労働条件通知書とそもそもの目的が異なるからです。
労働条件通知書は、労働の条件を「通知」する書類であり、労働者にとって問題なければよいとされています。
一方、雇用契約書は雇用者と労働者が「契約」を結ぶための書類です。労働者と雇用主の双方が納得し、契約として捺印を押すことで初めて効力を生じます。
2つの書類でどちらに効力があるかというと、「労働者が捺印を押して納得した」雇用契約書です。
のちに働き方でトラブルがあった際にも雇用契約書を交わすことでより有利となるため、作成しておくことを推奨します。
従業員に提出してもらう書類
雇用する上で、従業員に提出してもらう書類を以下にまとめました。
- マイナンバーカード
- 住民票記載事項証明書
- 被保険者証
- 年金手帳
- 口座振込依頼書
上記の書類以外にも、同年に退職して社会保険に加入するのであれば源泉徴収票や、扶養家族がいるなら給与所得者の扶養控除等申告書も必要になってきます。
従業員の雇用形態によって異なるため、社会保険に加入する際の年金事務所で必要書類を相談しておきましょう。
③社会保険・労働保険の手続き
従業員を雇用するには、社会保険・労働保険の手続きが必要です。加入には条件があり、もし満たしているならば従業員が「加入したくない」と言っても断ることはできません。
事業者における社会保険の加入条件ですが、個人事業主は常時雇用する従業員が5名以上になると加入義務が発生します。ただし、5名未満でも社会保険に加入することは可能となっており、この場合は任意での加入です。
また、法人だと無条件で加入義務が発生するため、マストで手続きを進めましょう。
従業員の加入条件は、以下の通りです。
- 常時雇用の場合
- 週または月の所定労働時間が常時雇用者の4/3を超える場合(パート従事者など)
常時雇用する従業員は必然的に加入義務が発生し、パート従事者であれば常時雇用者の4/3以上働くことで義務付けられます。
また、パート従事者のように短時間労働者でも以下の条件に当てはまると加入義務の対象です。
- 週の労働時間が20時間以上
- 月額賃金8.8万円以上
- 学生以外
- 1年以上の継続雇用が見込まれる場合(令和4年10月より2カ月に改訂)
- 従業員501名以上(令和4年10月より101名に改訂)
上記の「令和4年10月に改訂」とありますが、保険制度の適応拡大によって加入条件がより義務化に近付きました。2024年にもさらに適応拡大することが決定しているため、事業所の社会保険加入に対する対策を取っていきましょう。
④税金の手続き
従業員を雇用するためには税金の手続きが必要です。
税金の手続きで必要となるのが、従業員の所得税・住民税を源泉徴収するために「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を税務署への提出となります。
所得税の手続き
所得税は従業員の所得に応じて控除額が異なります。もし配偶者や子供が扶養家族としている場合は控除対象となるため、事前に「給与所得者の扶養控除申告書」を提出してもらわないといけません。
さらに、常時雇用している人数が10人以内だと「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申込書」を提出すれば、従来の翌月10日の納付期限が特例措置を受けられることで年2回に変更が可能です。
住民税の手続き
住民税は、事業主が給料から事前に差し引いて納付する「特別徴収」と、従業員が自分で行う「普通徴収」の2つがあります。基本的に従業員から申し出がない限りは特別徴収で事業主が納付することが原則です。
転職として従業員を雇用する場合には、入社した翌月10日までに「給与所得者移動届出書」を市町村に提出しないといけません。ただし、特別徴収の継続を希望しない場合は不要です。
さらに、もし前職の時に普通徴収で納付していた転職者が特別徴収を希望した場合は「特別徴収切替届出書」の提出が必要となります。
⑤労務管理の書類準備
労務管理とは、従業員の福利厚生や勤怠など労務に関する管理を行うことです。労務管理の書類は従業員が退職後の起算日から3年間の保管義務を要するものがあります。
法定三帳簿と呼ばれる保管義務が必要な書類は以下の通りです。
- 労働者名簿:起算日は退職・解雇・死亡の日
- 賃金台帳:起算日は最後の賃金を記入した日
- 出勤簿:起算日は最後の出勤日
労働者名簿は、従業員の情報として記載した書類です。記載するのは、氏名・生年月日・住所などの個人情報と、雇入年月日や業務の内容といった労働に関する項目があります。
賃金台帳は賃金に関する項目となり、氏名や性別、賃金の計算期間、労働時間数、基本給や手当などの種類と額などを記載した書類です。
出勤簿は、氏名や出退勤時間、労働日数、休憩時間など出勤に関する記録となります。
⑥36協定締結
36(サブロク)協定締結とは、労働基準法で定められた1日8時間・週40時間・休日週1日を超える労働をする場合に必要となります。
36協定締結の方法は、事前に「時間外・休日労働に関する協定届」を労働者と事業主が書面で締結し、労働基準監督署に届出をします。
さらに、労働者となる従業員が分かるように見やすい場所に提示、または書面にて伝えるなど周知が必要です。
本社や支店など複数に拠点を構える場合には、1拠点ずつそれぞれで締結をしておかなければなりません。もし36協定を締結せずに時間外残業や休日出勤をさせてしまうと違法となるため注意しましょう。
⑦就業規則の届出
就業規則とは、従業員に向けて働き方のルールや遵守事項、労働条件の規則のことです。もし従業員が10人以上になる場合は、就業規則を作成して労働基準監督署に届出をしなければなりません。
原則として従業員10人未満であれば規則を定める必要はありませんが、従業員の働き方や職場環境作りには最適とされるため、就業規則は作成しておいた方がよいです。
人を雇う際にかかる費用の内訳
人を雇用する場合にかかる費用は主に以下の2つです。
- 初期費用
- 維持費用
1人雇用するだけでも意外と費用がかかってしまうため、事前に想定しておかなければなりません。
それぞれについて、詳しく解説します。
初期費用
人を雇うにあたっての初期費用は、主に採用費用と教育費用です。最初にかかるのは採用費用となり、正社員として雇うのかパートやアルバイトで採用するかで変わってきます。
正社員として雇う場合は、主に新卒か中途採用かの2つです。新卒であればかかる費用は広告費がメインとされ、一般的には相場として1人当たり60万円~80万円ほどとされています。
中途だと広告以外でも人材紹介会社を介して求人を行うため、もし採用が決まった場合には仲介手数料として紹介料を払わなくてはなりません。よって、中途採用は1人当たり80万円~100万円と新卒よりも採用費用の相場が高いです。
パートやアルバイトで採用する場合は相場が3万円~5万円となり、正社員と比べてかなり費用を抑えられます。
教育費用は事業の内容によっても異なりますが、一般的な相場は1万円~5万円ほどです。社内研修で教育する場合は比較的安く収まり、社外研修に委託するとどうしても高額になってしまいます。
維持費用
人を雇用する際の維持費用は明確に見える給与だけに目が行きがちですが、実際には残業代や社会保険など加算される項目があります。
正社員として雇用する場合、給与のほかに従業員が手にするお金だけでも残業代や賞与、福利厚生における通勤手当や育児手当などさまざまです。
また、社会保険料は賃金に対してかかる費用となるため、残業が増えるほどその分高額になってしまいます。
- 健康保険:10%(事業主と従業員で折半)
- 厚生年金:18%(事業主と従業員で折半)
- 雇用保険:0.9%(事業主0.6%従業員0.3%)
- 労災保険:0.3~1%(事業主負担)
すべてを合計すると、事業主負担は約15%もかかります。
例えば月30万円の正社員を雇用した場合、約4.5万円が毎月社会保険料としてかかり、年間では約54万円です。さらに、残業代や賞与にも社会保険料は適用されるため、実際の金額はより高くなります。
1人雇用するだけでもかかる費用は高く、従業員が増えるほど加算されることも想定しておかなければなりません。
正社員を雇う際に費用を抑える3つの方法
正社員を雇う際に費用を抑える3つの方法を紹介します。
費用を抑える3つの方法は以下の通りです。
- 残業代を減らす
- アルバイトやパートを雇う
- 助成金を使う
それぞれについて詳しく解説します。
残業時間を減らす
正社員を雇う際に費用を抑える方法で特に大事になるのが残業時間を減らすことです。
残業代は基本給から所定労働時間を割り出し、1時間当たりで25%増加させる必要があります。もし1時間2,000円だった場合は500円の増加となり、月20時間の残業でも1万円の負担が割り増しされるということです。
残業する時間だけではなく人数が増えるほど負担も比例するため、年間で計算すると莫大な費用となってしまいます。できるだけ残業時間を減らす取り組みをしていきましょう。
アルバイトやパートを雇う
アルバイトやパートを雇うことで月の費用が抑えられます。
時給で雇用できるアルバイトは、年間で106万円以内の収入に抑えれば社会保険に加入する必要がありません。効率よくシフトを組めば、正社員を1人増やすよりも費用の負担を抑えることが可能です。
さらに、正社員の残業時間を減らすのにも最適で、アルバイトを雇うことで業務を分散していけば、給与だけでなく、社会保険料の負担も軽減されます。
初期費用としてもアルバイトは3~5万円程度で雇用できるため、全体的なコストとして抑えやすいです。
助成金を使う
正社員の費用を抑えるには助成金を使うのも1つの手です。
助成金は基本的に雇用している事業主に対しての項目が多く、なかには求職困難者を雇うことで受け取れる制度もあります。
シングルマザーを継続して雇うことで年間60万円の助成金が受け取れる特定求職者雇用開発助成金や、現在仕事をしていない1年以上の離職者をトライアル雇用することで1人当たり4万円の制度などさまざまです。
正社員のスキルを上げる取り組みで助成金を受け取れる制度もあるため、雇用する前に一度調べてみるとよいでしょう。
まとめ
今回は、個人事業主が初めて人を雇う際に必要な手続きを紹介しました。
人を雇うことで業務の効率化が図れることに間違いありませんが、かかる費用として想定しておかなければなりません。
なかでも人を雇うことで一番踏まえておく必要があるのは維持していける費用です。
社会保険料や残業費など目の届きにくい費用も多く、正社員を雇用するだけでも毎月の負担は大きいといえます。
もし、人を雇う際に手続きやかかる費用が不安という方は、人材雇用を手助けしてくれる業務委託してのサービスもあるので利用を検討してみてください。
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