ドミナント戦略とは?ドミナント戦略のメリット・デメリットや成功事例を徹底解説!

小売業や飲食業における効果的な出店戦略のひとつである「ドミナント戦略」についてご存知でしょうか。ドミナント戦略には、多くのメリットがある一方、無視できないデメリットも存在します。

この記事では、ドミナント戦略について深く知るためにそのメリットやデメリットに加え、導入に成功した事例についても解説します。この記事さえ読めば、ドミナント戦略に関する具体的なイメージが掴めるはずです。

ドミナント戦略とは?

ドミナント戦略とは、1つのチェーンストアを特定の地域へ集中して出店する戦略です。特定の地域へ集中して投資することで、占有率や知名度で競合の優位に立つことを目的としています。

「ドミナント(dominant)」とは、「支配的な、優勢な」という意味の英語。一定のエリアに多数の店舗を出店することでその地域を「支配」してしまえば、利益だけではない多くのメリットを得ることができるのです。

ドミナント戦略は、日本国内でも多くの企業が採用・展開している点から、とても効果の高い戦略だと言えるでしょう。

ランチェスター戦略との違い

ドミナント戦略とよく比較される経営戦略に、「ランチェスター戦略」があります。ドミナント戦略が特定の「地域」に集中的に投資する戦略であるのに対して、ランチェスター戦略は特定の「分野」に注力します。

例えば、「日本酒の品揃えではどこにも負けない酒屋」や「デリバリーの速さが地域で一番のピザ屋」と言うように、特定分野でのシェア獲得を狙う戦略がランチェスター戦略です。

ランチェスター戦略は、資金や社員数が豊富にある大企業に適した戦略というよりも、「中小企業が大企業に勝つための戦略」だと言えるでしょう。

全体的なシェアでは劣っていたとしても、ニッチな分野を開拓することができれば、どんな大企業にも負けない確固たるシェアを勝ち取ることができます。

ドミナント戦略のメリット

ドミナント戦略が成功すれば、利益面以外でもさまざまなメリットが得られます。成功によってどのようなメリットがもたらされるのかを知ることは、全体的な理解にも大きく役立つはずです。

ここでは、ドミナント戦略の代表的なメリットを以下の3つに分けて紹介します。

  1. 認知度の向上
  2. 効率的な製造・配送・販促によるコスト削減
  3. 競合他社が参入しづらくなる

メリット①:認知度の向上

ドミナント戦略により特定地域に同ブランドの店舗を集中的に出店すると、その地域での認知度が格段に高まります。

立ち上げたばかりのブランドや企業の場合、広い地域である程度の認知度を獲得するためにはかなりの時間やコストが必要になります。しかし、ターゲットとする地域を限定して投資することで、比較的容易にエリア内での認知度が獲得できるでしょう。

認知度が高まると利用者からの信頼も得られるため、集客にも好影響を与えます。また、「特定のエリアにしかない」というプレミア感を持たせることも可能です。

全国的に見るとまだまだ小さな企業だとしても、ドミナント戦略により特定の地域での知名度が高まるだけで大きな効果が期待できるのです。

メリット②:効率的な製造・配送・販促によるコスト削減

一定地域に店舗が集中していると、配送を効率的に行なえます。

配送にかかる全体的な距離が短くなるということは、ドライバーの人員不足の解消や、商品の品質改善などのメリットももたらします。製造工場を複数用意する必要もなくなり、稼働率も上げやすくなるでしょう。

また、一店舗にかける販促費用が少なくても、複数の店舗での販促効果が重なって地域の消費者に働きかけるので、販促コストも削減できます。

カフェなどの場合は、ある一店舗が混んでいてもその近くにある違う店舗に向かうという選択肢も与えられるため、集客面でも良い効果が見込まれます。

メリット③:競合他社が参入しづらくなる

ドミナント戦略によって知名度や占有率が高まると、その地域の消費者の囲い込みができます。消費者からの固い信頼を獲得し囲い込むことができれば、同業他社による新たな顧客の獲得が困難になるでしょう。

通常は、一度顧客を獲得したとしても競合他社の参入により顧客が流出してしまうリスクがあります。そのようなリスクを避けるためには、競合他社に対する何かしらの対策を取る必要が発生します。

しかし、ドミナント戦略によって競合他社の参入が困難になると、自社の優位性を保つために競合への対策を取る必要がなくなるため、結果的に大きくコストを削減できるでしょう。

ドミナント戦略のデメリット

ドミナント戦略にはさまざまなメリットがあると同時に、無視できないデメリットもあります。ドミナント戦略に成功したとしても、デメリットに対して適切に対処したり、リスクを減らすために取り組んでいく必要があるのです。

ドミナント戦略についてより深く知るために、デメリットについてもしっかりと解説していきましょう。ここでは、ドミナント戦略のデメリットを以下の3つに分けて紹介します。

  1. ノウハウを他地域に活かしにくい
  2. 環境変化によるリスクに対処しにくい
  3. 自店舗同士での奪い合いが発生する

デメリット①:ノウハウを他地域に活かしにくい

ドミナント戦略の特徴は、特定の地域に集中して投資する点にあります。ドミナント戦略の強みを活かすためには、地域にあったサービスや運営を行なっていく必要があるでしょう。

しかし、強みは他地域への進出においては一転して足枷にもなります。ドミナント戦略による店舗運営は、地域性に大きく依存してしまうため、他地域でノウハウやデータを活用しにくいのです。

そのため、新しい地域へ進出する場合には、1からノウハウやデータを積み重ねていく必要があるでしょう。

デメリット②:環境変化によるリスクに対処しにくい

特定の地域に集中して出店するドミナント戦略には、そのエリアで起きた環境変化により大きな損失が発生するリスクがつきまといます。

例えば、災害や高齢化による住民の減少などが起きれば、売り上げも大きく減ってしまうでしょう。顧客の数や売り上げが減ってしまうと、集中的に出店している店舗の運営費・維持費だけでも大きな負担となります。

結果的に、狭い地域の環境が変化しただけで、経営面での大きなリスクを抱えてしまうことになるでしょう。

デメリット③:自店舗同士での奪い合いが発生する

ドミナント戦略を実施すると、狭い地域に複数の自店舗が出店されることになります。顧客の数は有限なので、店舗が密集しすぎると店舗間での競争が発生してしまう場合があります。

自店舗同士での適度な緊張感はサービスの質向上につながりますが、競争が過剰になると無益なコストも増えてしまうでしょう。

この問題は特にフランチャイズ形式での出店が多い場合に、より深刻な問題に発展します。フランチャイズの場合、店舗同士でのシェアの奪い合いが発生したからといって、新たに出店した店舗を移転したり閉店したりするのは簡単ではありません。

反対に、フランチャイズではなく自社運営ならば、移転や閉店といった処置を比較的柔軟に取りやすいと考えられます。

ドミナント戦略の成功事例

ドミナント戦略は、日本国内でも多くの企業で取り入れられている出店戦略です。成功事例について知ることで、ドミナント戦略が現場でどのように活用されているのかに関する具体的なイメージが得られるでしょう。

ここでは、ドミナント戦略に成功した以下の3つの企業の事例を紹介します。

  • セブンイレブン
  • スターバックスコーヒー
  • ツルハホールディングス

事例①:セブンイレブン

「近くて便利」がコンセプトのセブンイレブンは、事業開始直後から継続してドミナント戦略を軸に経営を行なってきた企業です。

セブンイレブンは創業当初、「江東区内から出ない」というルールの下で新規店舗の出店を行なっていたと言います。特定の地域に積極的に新規出店を行なってきた結果、小売業としてはじめて国内2万店舗を出店するなど日本で知らない人はいない大企業へと発展を遂げました。

また、日本最多の出店数を誇るセブンイレブンですが、全都道府県への出店を果たしたのはファミリーマート、ローソンを含めた3大チェーンの中で最も遅い2019年7月です。このエピソードからも、セブンイレブンがどれだけドミナント戦略を重視しているかが伺い知れるでしょう。

事例②:スターバックスコーヒー

シアトルの小さなカフェから始まり、今では全世界にコーヒーショップを展開しているスターバックスコーヒーも、ドミナント戦略に成功した企業の1つです。創業当初、シアトル市内でドミナント戦略を積極的に推し進め、現在はシアトル市内で100店舗以上が営業しています。

スターバックスコーヒーは、日本でもドミナント戦略を展開しています。街角を歩いているとき、近いエリアに出店されている何店舗ものスターバックスコーヒーを目にしたことがあるのではないでしょうか。

スターバックスコーヒーによるドミナント戦略が最も顕著に表れている地域は新宿区で、そのエリアだけで合計30ほどの店舗が集中的に出店されているそうです。

事例③:ツルハホールディングス

「ツルハドラッグ」「くすりの福太郎」などのドラッグストア事業を展開するツルハホールディングスは、ユニークな形でドミナント戦略を推し進めています。

ツルハホールディングスがドラッグストア事業で展開している店舗は全部で8店舗あり、それぞれが異なるニーズを踏まえて営業しています。そのようなマルチフォーマット戦略により、ドミナント戦略のデメリットのひとつである自店舗同士での顧客の奪い合いを回避することができているそうです。

「薬剤を基盤に、地域に根差して良い商品、サービスをおとどけする」をコンセプトに事業を展開するツルハホールディングスの特徴が表れた戦略と言えるでしょう。

まとめ

国内でも多くの企業が実施・導入に成功しているドミナント戦略は、利益面だけでない多くのメリットと同時に、デメリットも併せ持つ出店戦略です。この記事で紹介したドミナント戦略のメリット・デメリットについてもう一度振り返ってみましょう。

ドミナント戦略のメリット
  • 認知度の向上
  • 効率的な製造・配送・販促によるコスト削減
  • 競合他社が参入しづらくなる
ドミナント戦略のデメリット
  • ノウハウを他地域に活かしにくい
  • 環境変化によるリスクに対処しにくい
  • 自店舗同士での奪い合いが発生する

この記事では、ドミナント戦略に成功した企業の事例についても紹介しました。ドミナント戦略の実際の事例について、特徴やメリット・デメリットと照らし合わせながら考えることも、理解をより深めるために役立つでしょう。

ドミナント戦略は成功すれば大きな利益やメリットを得られますが、併せ持つデメリットも無視できるものではありせん。ドミナント戦略を実施する際には、自社の状況に合わせて慎重に取り組む必要があるでしょう。