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飲食店を経営したいけど、資金が足りない、大変などと思っている方も多いのではないでしょうか。そんな方には、「シェアレストラン」や「ゴーストレストラン」がおすすめです。店舗を構えず、既存の店舗やキッチンを借りて、飲食店を始めることができるので、近年注目されている業態です。
既に飲食店を経営しているオーナーの方も他店舗展開に活用することができるので、知っておいて損はありません。この記事では、シェアレストランとゴーストレストランについてそれぞれ紹介していきます。
シェアレストランとは
シェアレストランとは、飲食店の経営方法の1つで、レストランを複数の経営者でシェアする新しい形態の飲食店です。店舗の空き時間に場所を貸したい人と、飲食店を開業したいけれど場所を確保しにくい人や資金が足りない人、この双方にメリットのある経営スタイルです。
シェアレストランと同じ意味合いのものは以下3つあります。
- シェアレストラン
→間借りで開業したい人と店舗を貸したいオーナーとをつなぐマッチングサービス - シェアキッチン、クラウドキッチン
→調理場を複数人で利用するシェアリング型の店舗運営サービス - ゴーストレストラン
→無店舗型でデリバリー販売を行う店舗形態の総称
シェアレストランは、飲食店を間借りする以外にキッチンだけを借りるタイプもあります。この場合、店内で食べるのではなく、デリバリーサービスやテイクアウトを利用するスタイルです。
シェアレストランの仕組み
間借り利用を行う場合は知人の紹介や、自分で物件を探したりと手間がかかります。また、開業資金も多く必要であるため、独創的なアイデアや世界観があっても始めることができない人も多いのが現状です。
そうした課題をシェアリングエコノミーの普及促進で、店舗オーナーと出店希望者のマッチングを行うプラットフォームがシェアレストランです。
引用元:シェアレストラン公式HP
シェアレストランの手数料・料金プラン
下記は、吉野家ホールディングスが運営する「シェアレストラン」の概要図です。
金額はマッチング時の一例ですが、開業希望者は敷金や礼金、内装費用など初期費用を抑えることができ、低コストで出店ができます。
費用項目 | 料金目安 |
敷金・礼金 | 無料 |
仲介手数料・補償金 | 無料 |
内装・工事費用 | 無料 |
店舗レンタル手数料 | 20% |
月額家賃(物件により変動) | 5∼30万円/月 |
利用期間 | 1ヶ月∼ |
月々の利用料金や間取り期間は店舗のオーナーの方次第ですが、1ヶ月からレンタル可能な物件もあり、お試しで開業ができるという特徴もあります。
シェアレストランとキッチンの違い
シェアレストランは、間借りに特化したマッチングプラットフォームです。対して、シェアキッチンは複数の店舗オーナーが場所を共同利用し、デリバリー販売ができる環境を提供するサービスです。
シェアレストランの開業側のメリット
シェアレストランには、以下4つの開業メリットが挙げられます。
- 低コストで飲食店の独立開業
- 人件費・家賃など固定費の大幅削減
- デリバリー需要による販売チャネルの拡大
- 経営者や店長同士が仲良くなれる
メリット①:低コストで飲食店の独立開業
飲食店開業の初期費用は1,000万円を超えると言われています。しかし、店舗を間借りするシェアレストランサービスを利用すれば、店舗を借りるにあたってかかってくる仲介手数料・敷金・礼金などの初期費用を抑えることができます。
物件によっては調理設備やネット環境も整っていることもあります。
メリット②:人件費・家賃など固定費の大幅削減
飲食店を開業するためには、店舗の内外装やキッチンの設備投資、融資を受けるのであれば保証金など多額の開業資金が必要です。飲食店の開業の初期費用は1,000万円を超えると言われています。また、営業が軌道に乗らず閉店せざるを得ない状況になれば、施設を原状回復させる工事や退去の費用も支払う必要がでてきます。
シェアレストランの場合は、既にあるお店の設備をそのまま使用できるため初期費用がほとんどかからず、原状回復工事も要りません。低コストで開業することができ、退去時の費用もおさえることができるため、飲食店を初めて経営する人や多店舗経営に挑戦したいという人もチャレンジしやすいです。
また既存店を間借りするシェアレストランは、オープン準備を短期間で済ますことができます。最大のメリットとしては、既存店で食事をしたお客様に自店を宣伝することができるため認知度が高まりやすく、客層の幅が広がる可能性があります。
多店舗展開を考えているオーナーにもメリットがあります。地域に提供する飲食物のニーズがなければいけないが、これを調べることは難しいからです。シェアレストランを利用ししばらく営業してみると、実際に営業を始める際のテストケースとして参考になります。
メリット③:デリバリー需要による販売チャネルの拡大
消費者行動の変化に合わせたサービスの提供も、ビジネスをする上で大切なポイントです。
近年デリバリーや宅配の利用が増えてきており、今後これに関する市場は拡大が予測されます。すると、これまで顧客化できていない中食需要もターゲットにすることができます。
無店舗型レストランで開業する飲食店だけでなく、実店舗を構えている企業でも新たな販売チャネルの1つとなるでしょう。
メリット④:経営者や店長同士が仲良くなれる
間借りをして営業を始めると、経営者同士が同じ場所を共有することになるため、必然的に関りが増えます。そこで新メニューの共同開発ができたり、新たな取り組みができたりなど良好な関係を築くことができるでしょう。
シェアレストランの店舗オーナー側のメリット
店舗のオーナー側のメリットとしては、場所を貸すことで毎月お金が入るため不労所得を得ることができます。対して、場所を借りる側は店舗の契約や内装工事をする手間が省けるので、初期投資を抑えられます。
また、アイドルタイムにかかっている光熱費などの一部をシェアレストラン側に負担してもらうことができるため、ランニングコストの軽減も可能です。
シェアレストランを訪れたお客様に自店を知ってもらうこともできるため、相乗効果で集客数のアップも期待できます。
シェアレストランのデメリット
シェアレストランは、既にあるお店の内装や設備をそのまま使用するため、キッチンの設備によっては構想していたメニューを提供できなかったり自店のコンセプトと店舗の雰囲気が合わなかったりする場合もあります。
また、食材の保管場所や冷蔵庫は既存店と共有するので、使えるペースが限られ不便を感じるかもしれません。既存店の空き時間に営業するので、時間に制約があったりなど自分の中で思い描いていた店舗運営が叶わない可能性もあります。
自分が思い描いていたシェアレストランを実現させるためには、事前に設備をよく確認し、使用可能なスペースなどをオーナーとしっかり話し合い、店舗を選ぶことが大切です。ミスマッチを引き起こさないよう、借りる際は実際にお店を訪問して確認し、何をどこまで使用していいのかなどオーナーと相談して確認しておきましょう。
シェアレストランが流行っている背景
シェアレストランが注目される背景として、以下の4つが挙げられます。
- コロナ禍で上昇するオフィスの空室率
- 1年以内の廃業率は約30%、初期投資が必要な飲食店開業
- 拡大するデリバリー市場、高まるゴーストレストランへの注目度
- 飲食店に興味があっても、開業するのは大変と感じている人が多数いるから
背景①:コロナ禍で上昇するオフィスの空室率
(参照:中日新聞┃三大都市オフィス空室率の推移)
三密回避などのコロナ対策の機運も高まり、テレワークの推進や本社移転をする企業もあるため、オフィスの空室率は増加しています。
背景②:1年以内の廃業率は約30%、初期投資が必要な飲食店開業
下記のグラフは、飲食店.COMが3,500件以上のデータから作成した飲食店の営業年数です。
(参照:飲食店.COM┃閉店した飲食店の営業年数 業態別割合)
レストランや飲食店を開業するためには、家賃や内装、インフラ、キッチン設備など、初期投資だけで1,000万円を超えると言われています。多額の資金が必要なのにも関わらず、飲食店の開業後の営業年数は一般的に1年未満が約30%、3年後には約70%が廃業と短いです。
背景③:拡大するデリバリー市場、高まるゴーストレストランへの注目度
そんな飲食店業界の課題解決に繋がるトレンドとして、デリバリー市場は大きな影響を与えています。下記のグラフは、矢野経済研究所が作成した食品宅配に関する市場調査レポートです。
(参照:矢野経済研究所┃食品宅配市場に関する調査)
飲食店業界でもEC化、オンラインシフトが進み、宅配市場は2023年には2.4兆円市場に成長すると予測されています。コロナ対策による外出自粛の影響もあり、自粛している人をターゲットとしたターゲットデリバリー市場の拡大が見込まれるでしょう。
ゴーストレストラン・デリバリーに関する検索回数を調べてみても、増加傾向にあることが分かります。無店舗型でも開業できるデリバリーサービスをきっかけに、実店舗を持たないゴーストレストラン関連の注目度も増加していると思われます。
背景⑤:飲食店に興味があっても開業するのは大変と感じている人が多数いるから
シェアレストランが注目されている背景には、飲食店に興味があっても開業するのは大変だと感じている人が多くいるからです。副業時代が到来し、週末起業やプチ起業をする人も増えました。
一般企業に勤めている会社員や主婦・主夫層にも、「今の仕事を続けながら第2の挑戦もしたい」「自分の好きなことで起業したい」という人が増えてきています。
SNSで写真が拡散され、宣伝費をかけずに人気になった店舗の実例が増えており、「自分もしてみたいけど、いきなり始めるのは抵抗がある」と思っている人が多いです。そこで後押ししてくれるシェアレストランが注目されています。
ゴーストレストランとは
ゴーストレストランとは、無店舗型でデリバリー販売を行う店舗形態の総称です。近年出前館やウーバーイーツなど独立したフード宅配サービスが増え、自宅や職場で弁当や惣菜を食べる中食市場が成長し、誕生した新業態です。
一般の飲食店を丸ごと借りて店舗に来たお客様に料理を振る舞うスタイルであるシェアレストランに対し、ゴーストレストランはフードデリバリーサービスに特化した無店舗型の飲食店です。
ゴーストレストランは実店舗を持たないため、キッチンさえあればどこでも営業することができます。営業の実態がないように見えるため、「ゴースト」と呼ばれるようになりました。
ゴーストレストランのメリット
ゴーストレストランは無店舗型であるため、客席やホールがありません。そのため、店内の接客や会計、料理の運搬などの業務が不要です。また、配送も既存の配送サービスを使用すればスタッフを雇う必要はありません。
支出はキッチンの使用料、料理の原価、宅配業者への支払い、広告費などだけです。複数の看板を掲げることもできます。初期投資がほとんど必要ないので、店舗の方向性も自由に変えることができます。
ゴーストレストランのデメリット
ゴーストレストランの課題は、店舗が営業していることを認識してもらいにくいことです。自発的に宣伝しないと存在を知ってもらうのは難しいため、宣伝方法がかなり重要になってきます。
実店舗がある飲食店はフードデリバリーを利用することで、実店舗への来店や宴会の申込みに誘致することができます。しかし、キッチンしかないゴーストレストランはデリバリーによる副次的な広告効果は望めません。メニューに合ったターゲットに対して、効果的に情報を届ける必要があります。
シェアレストランを円滑に営業するためのコツや注意点
シェアレストランの営業中に、既存店の設備や備品を壊してしまったり、既存店の食材を間違えて使ってしまったりなど、ミスをしてしまうこともあるかもしれません。既存店とトラブルにならないよう、問題が生じた場合の対処方法や賠償内容について事前に取り決めをしておきましょう。
ここでは、シェアレストランを円滑に営業するためのコツや注意点を4つ紹介します。
- 営業許可を取っておくといざという時のトラブル防止に
- 利益圧迫のコスト構造・大手デリバリーサイトの手数料
- 首都圏など限定的な開業エリア
- プラットホームで競合負けしない差別化・メニュー企画
注意点①:営業許可を取っておくといざという時のトラブル防止に
例えば、シェアレストラン側で食中毒が発生した場合、シェアレストラン側は保健所から営業停止処分を受けます。この時、既存店の処分は契約内容によって異なります。
物件オーナーが既存店とシェアレストランの両方に店舗を貸し出している場合は、既存店は営業停止を免れることができます。
物件のオーナーが既存店とシェアレストランの両方に店舗を貸し出している | シェアレストランのみ営業停止 |
既存店がシェアレストランに業務委託している場合 | 既存店・シェアレストラン双方営業停止 |
シェアレストランが保健所の営業許可を取っている場合 | シェアレストランのみ営業停止 |
既存店のみ保健所の営業許可を取っている場合 | 既存店・シェアレストラン双方営業停止 |
既存店がシェアレストランに業務委託している場合、既存店も営業停止になってしまいます。しかし、シェアレストラン側が保健所の営業許可を取っていれば、シェアレストランだけが責任を負って営業停止となります。既存店しか営業許可を取っていない場合は双方が営業停止処分となります。
既存店が営業許可を得ていれば、シェアレストランは営業許可がなくても経営をすることができますが、後々のトラブルを回避するためにシェアレストラン側も営業許可を取っておくと安心でしょう。
注意点②:利益圧迫のコスト構造・大手デリバリーサイトの手数料
以下の表はゴーストレストランのコスト構造と料金体型です。
実店舗型 | 無店舗型 | |
利益 | 10% | 20% |
月額コスト | 30% | 15% |
人件費 | 25% | 30% |
原価費 | 35% | 35% |
シェアレストラン活用をして、初期費用を大きく抑えて独立開業が可能なのがゴーストキッチンの特徴です。しかし販売を行う場合、フードデリバリーサイトに掲載を行う必要があるため、「売上×手数料」が発生します。
大手飲食チェーン店が掲載する場合はボリュームディスカウントなど、手数料が下がる場合も考えられますが、小規模店舗には難しいです。
サービス名 | 初期費用 | 手数料 |
Uber Eats | 無料 | 売上×35% |
出前館 | 無料 | ・サービス利用料:商品代金×10%・配達サービス料:商品代金×30% |
menu | 無料 | 売上×34% |
LINEデリマ | 4.8万円 | 売上×40% |
初期費用は無料のデリバリーサービスが多いですが、手数料は約30%前後です。デリバリープラットフォーム上では、大手と戦わない独自のメニューの戦略やターゲティングも成長するためのポイントです。
注意点③:首都圏など限定的な開業エリア
シェアレストランのような調理スペースの間借りマッチングサービスは、現時点で東京を中心とした首都圏で物件が多いです。
マッチングプラットフォームへの掲載物件件数が増えるまでは、地方でのゴーストキッチン開業は物件・仲間探しから始める必要があるでしょう。
注意点④:プラットホームで競合負けしない差別化・メニュー企画
EC型モールと同様に、集客はプラットフォームに依存してしまうため他の出店企業に埋もれる可能性も今後出てきます。
そのため、独自性のあるメニューの企画やコアファンをつくるためのSNS・WEBマーケティング戦略が他店舗と差別化していく上で重要となるでしょう。
まとめ
コロナウイルスの感染拡大で、飲食業界にも変化が求められています。この記事で紹介したシェアレストランやゴーストレストランは、資金や集客に不安がある方、自信が持てない方の助けとなってくれるサービスです。
マーケティングやシミュレーションとしてお試しで活用することもできます。目的を絞って利用することで投資した費用以上の成果が期待できるでしょう。
コストを抑えてデジタルを活用した新しい店舗づくりは、今後の注目トレンドとなるでしょう。いきなり自分で飲食店を始めるのはリスクが高いので、このようなサービスを活用してみてください。
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