飲食店の営業許可を取る方法|7つの必要書類〜取得までの流れを紹介

飲食店の風景

これから飲食店の営業をしたいと思っている方のために本記事では、飲食店の営業許可を取る手順や費用などを詳しく解説します。

本記事さえ見れば、飲食店の営業許可に必要な書類や流れが分かるので参考になれば幸いです。

飲食店は営業許可が必須!開業前に届け出を

ラーメンや居酒屋などの飲食店を営業するには営業許可が必ず必要です。

営業許可を申請中に営業してもダメなので、余裕をもって開業前に申請しておきましょう。

①営業許可の取得前は開業できない!

営業許可を取得してないのに営業するのは違法です。

仮に申請していても、まだ営業許可を取得してないのであればダメなので注意しましょう。

ちなみに、無許可営業をすると2年以下の懲役または200万円以下の罰則が与えられます。

それに加えて、罰則以降2年は経たないと営業許可を申請できなくなるので必ず営業許可を取得してから営業開始しましょう。

②営業許可を得る条件は2つ!

営業許可を得る条件は2つあります。

営業許可を得る条件

  1. 食品衛生責任者を置く
  2. 営業許可書を取得する

上記2つをクリアしないと飲食店の営業はできません。

それぞれ詳しく解説していきます。

飲食店では食品衛生責任者が必要

まずは、食品衛生責任者について解説します。

飲食店では店舗ごとに食品衛生責任者が必要です。

食品衛生管理者とは違うので勘違いしないようにしましょう。

①食品衛生責任者の職務は衛生管理

食品衛生責任者は、以下のような衛生管理に関する業務を行います。

  • スタッフの健康管理
  • 調理場やトイレなどの衛生管理表作成・管理
  • 食材の保管方法や調理方法のチェック

店舗内の衛生管理を管理しなくてはいけません。

参考:一般社団法人東京都食品衛生協会(https://www.toshoku.or.jp/training/seki-gaiyou.html)

参考:公益社団法人日本食品衛生協会(http://www.n-shokuei.jp/eisei/sikaku.html?msclkid=a4dc2e2ad0cf11ecba7cb86eab036d7f)

②食品衛生責任者の2つの取得条件

食品衛生責任者を取得する方法は2つあります。

① 栄養士、調理師、製菓衛生師、食鳥処理衛生管理者、と畜場法に規定する衛生管理責任者若しくは作業衛生責任者、船舶料理士、食品衛生管理者(注1)の有資格者。

② 都道府県知事等が行う食品衛生責任者になるための講習会または都道府県知事等が適正と認める講習会の受講修了者。

(注1) 医師・獣医師・歯科医師・薬剤師または、学校教育法に基づく大学で、医学・歯学・薬学・獣医学・畜産学・水産学・農芸化学の課程を修めて卒業した者等。

①に当てはまる場合は、実務経験や講習などをしなくても申請をするだけで「食品衛生責任者」の資格が得られます。

それ以外の方でも講習を受ければ「食品衛生責任者」の資格を取得可能です。

講習は経験や学歴関係なく17歳以上であれば受講できて、1日で取得できます。

参考:公益社団法人日本食品衛生協会

参考:東京都食品衛生協会

③食品衛生責任者と食品衛生管理者の違い

「食品衛生責任者」は飲食店営業ではほぼ必須です。

一方で、「食品衛生管理者」は製造加工する一部の食品を製造する工場で選任する必要があります。

以下の食品・添加物の製造又は加工を行う施設には、食品衛生管理者を置かなければいけません。

食品衛生管理者が必要な食品

  • 全粉乳(その容量が1,400グラム以下である缶に収められるものに限る)
  • 加糖粉乳
  • 調整粉乳
  • 食肉製品
  • 魚肉ハム
  • 魚肉ソーセージ
  • 放射線照射食品
  • 食用油脂(脱色又は脱臭の過程を経て製造されるものに限る)
  • マーガリン
  • ショートニング
  • 添加物(食品衛生法第11条第1項の規定により規格が定められたものに限る)

ちなみに、「食品衛生管理者」は「食品衛生責任者」の資格も兼ねています。

参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049348.html

営業許可書を取得するまでの4つの流れ

続いては営業許可書取得の流れについて解説します。

営業許可書を取得するまでは、申請書類の準備、保健所の検査をクリアすることが必須です。

営業許可書取得の流れ

  1. 保健所に事前相談する
  2. 営業許可の申請を行う
  3. 保健所の施設検査を行う
  4. 営業許可書が交付される

分かりやすく順を追って解説していきます。

ちなみに、特に問題なければ申請から2〜3週間で営業を開始できることが多いようです。

①保健所に事前に相談

まずは、保健所に図面を持って事前相談することをおすすめします。

理由としては、後ほど解説する「保健所の施設検査」があるからです。

先に店舗の工事をしてしまうと、施設検査時に要件を満たさなければ工事後でも直さなければいけません。

そうすると費用も時間も余計にかかってしまいます。

そのため、急いでいても事前に保健所で事前相談するといいでしょう。

②営業許可の申請を行う

図面に問題がなければ工事を進めると同時に申請の準備をしていきましょう。

申請には施工検査の日程調整が含まれるので、工事終了後に申請すると施設検査待ちになってしまうことがあるからです。

申請に必要な書類については後ほど解説します。

③保健所の施設検査を行う

申請書類を提出して、工事完了後には実際に保健所の担当者が現地にて施設調査を行います。

具体的には以下のような条件を満たす必要があります。

保健所の施設検査の例

  • 厨房と客席が扉などで区分けされているか
  • 冷蔵庫、冷凍庫は庫内温度が分かる温度計が設置されているか
  • 窓や開閉する箇所には、ゴミ、ネズミ、昆虫などが入らないように網戸等を設けているか

上記のような細かい条件を満たさないといけないので、先ほども言ったようにあらかじめ保健所で事前に相談することを推奨しています。

④営業許可書が交付される

施設検査に問題がなければ許可書が作成されます。

営業許可書の交付には数日かかるので予定日まで待ちましょう。

予定日になったら保健所へ行って、営業許可書を受け取ればようやく飲食店として営業ができます。

営業許可の申請書類は7種類

営業許可の申請書類には以下の7種類が必要です。

営業許可の申請書類一覧

  1. 飲食店営業許可申請書
  2. 営業設備の大用
  3. 内装の平面図
  4. 場所の見取図
  5. 登記事項証明書 ※法人が申請する場合。個人事業主は不要
  6. 水質検査成績書 ※貯水槽や井戸水を利用する場合
  7. 食品衛生責任者の資格を証明する書類

「登記事項証明書」と「水質検査成績書」は必要ない場合があるので、ご自身の状況に応じて必要な書類を用意しましょう。

それぞれ詳しく解説します。

①飲食店営業許可申請書

「飲食店営業許可申請書」は、保健所で直接もらうか各都道府県のホームページで印刷することができます。

記載する内容は、申請者や施設、食品衛生責任者などの情報です。

申請書の記入項目は保健所によって違うので、所在地を所管する保健所が発行する申請書を使うようにしましょう。

②営業設備の大要

出入口や窓、各設備(調理設備、手洗い場、冷蔵・冷凍庫、換気設備など)、更衣場所、トイレの配置などの情報を正確に記入します。

こちらも保健所か各都道府県のホームページにて印刷可能です。

③内装の平面図

厨房やホールになにが配置されているかを示した平面図です。

内装業者に依頼している場合は平面図が用意されている場合がほとんど。

手書きでもいいので定規とボールペンを使って「内装の平面図」を作成しましょう。

④場所の見取図

お店の位置を伝えるための資料です。

基本的には地図を印刷して丸をつけるだけで大丈夫ですが、分かりにくい場所であれば少し説明を加えましょう。

保健所によっては用意しなくてもいい場合もあるので確認しておくといいです。

⑤登記事項証明書

「登記事項証明書」は登記記録の内容を記載した書類。

法人が申請する場合のみ必要なので、個人事業主は用意しなくて大丈夫です。

「登記事項証明書」は、登記所又は法務局証明サービスセンターの窓口の他にもオンラインでも手続きができます。

⑥水質検査成績書

貯水槽や井戸水を利用する場合は「水質検査成績書」が必要になります。

「水質検査成績書」は、厚生労働大臣の登録を受けている機関が行っている水質の検査結果報告書です。

お店で使用する水が貯水槽や井戸水を使用しているか分からない場合は、物件を管理している大家さんや不動産会社に聞いてみましょう。

大家さんか不動産業者が「水質検査成績書」を保管しているはずなので、ついでにコピーさせてもらうといいです。

保健所によってはコピー不可の場合もあるかもしれないので、事前相談で聞いておくといいでしょう。

⑦食品衛生責任者の資格を証明する書類

食品衛生責任者の資格を証明する書類は、「食品衛生責任者手帳」が一般的です。

食品衛生責任者の資格取得方法は、前述した「食品衛生責任者は必須!取得条件を解説」にて解説しているので参考にしてください。

飲食店の営業許可に関するQ&A

さらに詳しく飲食店の営業許可について解説するためにQ&A方式で解説していきます。

①深夜営業は「深夜酒類提供飲食店営業開始届」が必要

以下の要件に1つでも当てはまる飲食店の場合、「深夜酒類提供飲食店営業開始届」が必要になります。

さらに届け出が必要な条件

  • 酒類を提供
  • 深夜0時以降も営業する

バーや居酒屋など、上記に当てはまる飲食店を営業したいなら今回解説した営業許可書に加えて「深夜酒類提供飲食店営業開始届」も取得しましょう。

②製造販売する場合は届け出が必要

食品を製造販売する場合は、飲食店営業許可とは別で届け出または各業種の営業許可取得が必要な場合があります。

取り扱う食品が飲食店営業許可とは別で届け出や許可が必要なのかは保健所で聞いておくといいでしょう。

こちらも許可を取得しないで販売していたら違法なので注意。

詳しく知りたい方はこちらを参考にしてください。

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kyoka/kyoka_1.html

③30人以上収容する場合は消防に「防火管理者」の資格が必須

飲食店で収容人数30人以上の場合には「防火管理者」の資格が必要です。

「防火管理者」の資格は講習を受けることで取得できます。

気を付けないといけないのが、収容人数は従業員も含めてということです。

例えば、客席が28人だったとしても従業員が2人いるのであれば収容人数は30人となります。

「防火管理者」の資格は2種類あって、店舗の面積によって変わるので注意が必要です。

延面積必要な種類費用講習時間
300㎡以上甲種防火管理者8,000円約10時間(2日間講習)
300㎡未満乙種防火管理者7,000円約5時間(1日間講習)

甲種防火管理者であれば、乙種防火管理者も兼ねています。

今後大きな店舗を営業する時に備えて、甲種防火管理者を取得しておくのがいいでしょう。

乙種を取得してから甲種を取得すると費用も時間もかかってしまいます。

参考:https://www.bouka-bousai.jp/hp/lec_info/index.html

④営業許可書取得にかかる費用は2万円以下

営業許可書取得にかかる費用は、約15,000円〜20,000円です。

飲食店の営業形態や地域、保健所によって多少違いますが、2万円以下となっています。

例えば、主要な都市の飲食店営業許可の申請料金は以下の通りです。

地域費用
東京都渋谷区18,300円
大阪府大阪市16,000円
愛知県名古屋市16,000円

参考:

https://www.city.shibuya.tokyo.jp/jigyosha/eisei/shokuhin/eigyokyoka.html

https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000005787.html

https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000011885.html

⑤申請から3週間で開業できる

特に問題なく進んだ場合、営業許可の申請から2〜3週間で営業開始できます。

施設検査時になにか問題があって再工事が必要だったり、申請書類に不備があったりすると時間がかかってしまいます。

なるべく短い期間で終えられるように分からないことや曖昧なことは事前相談で聞いておきましょう。

⑥営業許可書には有効期限がある

営業許可書には有効期限があるので一生使うことはできません。

一般的には5〜8年の有効期限があり、更新する必要があります。

更新の流れとしては以下の通りです。

営業許可書更新の流れ

  1. 保健所に連絡
  2. 更新の申請手続き
  3. 立入検査

最初に申請した時と同様に保健所の施設検査があるので、店舗に不備がないかチェックしておきましょう。

更新手続きには、

  • 身分証
  • 飲食店営業許可書
  • 更新料

が必要です。

保健所によってはそれ以外にも必要な書類があるので、ご自身の管轄の保健所で確認してみてください。

更新にかかる費用も保健所によって違いますが、12,000円前後が目安となっています。

⑦無許可の営業は罰則

冒頭でも言ったように、当たり前ですが無許可営業は違法です。

以下のように罰則が与えられます。

第五十五条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。

第五十五条 前条に規定する営業を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。

② 前項の場合において、都道府県知事は、その営業の施設が前条の規定による基準に合うと認めるときは、許可をしなければならない。ただし、同条に規定する営業を営もうとする者が次の各号のいずれかに該当するときは、同項の許可を与えないことができる。

一 この法律又はこの法律に基づく処分に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者

二 第五十九条から第六十一条までの規定により許可を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者

三 法人であつて、その業務を行う役員のうちに前二号のいずれかに該当する者があるもの

③ 都道府県知事は、第一項の許可に五年を下らない有効期間その他の必要な条件を付けることができる。

要するに、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金と2年は営業許可申請ができなくなります。

無許可営業はデメリットしかないので、早く営業したくても必ず営業許可を取得してから営業しましょう。

行政書士に依頼すると安心!

本記事を読んでみても「めんどくさい」という方は行政書士に依頼するのがおすすめです。

行政書士に依頼すればこれまで解説した手続きや各書類の作成といった面倒な作業をすべて行ってくれます。

行政書士がしてくれる業務

  • 許可申請書の作成
  • 営業設備の大要の作成
  • 申請用図面の作成
  • 保健所との事前打ち合わせ
  • 許可申請書の提出
  • 保健所の検査立会い
  • 営業許可書の受領

行政書士によって可能な業務は違うので依頼前にきちんと聞いておきましょう。

費用はかかりますが、面倒な作業はプロに任せて自分はそれ以外のことに集中できるのが大きなメリットですね。

飲食店の営業許可には早めの準備が必要!(まとめ)

本記事で解説した通りに準備を進めれば営業許可を取得できるはずです。

特に問題も起こらずスムーズにできれば1か月もかからないうちにできますが、初めての方は早めに準備をしておきましょう。

どうしてもめんどくさい方は行政書士にお任せするのが一番手っ取り早いのでおすすめです。

本記事が未来の飲食店経営者のお役に立てれば幸いです。